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【獣医師コラム】 胆泥症と診断されたワンちゃん・飼い主様へ 胆泥症とは?診断された場合の対処は? 東京都江東区の木場パークサイド動物病院

東京都江東区・木場駅・東陽町駅から徒歩6分の、木場パークサイド動物病院です。

当院では、胆泥症と診断されたワンちゃんに対するセカンドオピニオンのご相談を多くお受けしています。

今回は、主に犬で見られる「胆泥症」について、診断された場合の対応、検査や治療の考え方を中心に詳しく解説いたします。

よくみる胆泥に関して、ヒトのデータや報告と比較しながらどうするべきかを検討してみました。

まずはヒトのデータと報告をお示しします。

ヒトの胆泥症

ヒト胆泥の成分:コレステロール胆汁酸ビリルビンリン脂質

胆泥ができるメカニズム:ヒトの医療では詳細なメカニズムは不明です。

            胆汁成分の変化や胆嚢機能の低下が生じて胆汁から胆泥に変化

            していくと考えられていいます。


海外のある病院で統計をとったところ胆泥症の患者76%はそれ自体が問題にならず、残りの24%は胆泥による合併症が認められたという報告があります。

ヒトでは胆泥を有する患者さんの4人1人がそれによる問題が起こる可能性がある

 ということになります。
 

ヒトの胆泥症でウルソデオキシルコール酸 (UDCA) を使う目的は以下のものなります。

 ( UDCAは胆泥を有する犬に処方されるのを散見する薬です。)
 

・結石からコレステロールを融解させる

・胆汁のコレステロール飽和度の低下

・コレステロール結晶の核形成の遅延

 →胆泥形成の抑制に関与するかもしれないとされていますが、実際にそれを証明した

 データは存在しません。


UDCAの胆泥治療に関する報告はほとんどなく、胆泥の治療に有効であることを証明したデータはありません。


ヒトの胆泥の治療はその原因がわかっていればそれを治療するのが基本です。


一方で経過観察しても76%問題になりませんので治療をする必要がないという考えも多いようです。そして、もし症状が出現したら手術を検討するというのが一般的です。


では胆泥による症状がみられることは非常に稀です。

手術が困難な場合にはUCDAなどが勧められるとされています。


しかし、UCDAの有効性は報告されていません。


→ UCDAは胆泥による症状がある場合には使用を考慮するが有効性が証明されているわけではないということになります。

犬の胆泥

・そもそも病気なのか?

犬の胆泥の組成は、胆汁中にもともと多く含まれる粘液物質であるムチンが主体であると報告されています。
ヒトとは成分が異なるということです

犬が胆泥を有している確率健康な個体の53% 

             肝臓胆嚢に胆泥以外の疾患のある個体の62%

             他の疾患の個体の48% 

             

             これは健康な個体も疾患のある個体も胆泥を有する確率は

             同じということになります

               

             →胆泥は偶発所見であると結論づけられています。

  

  海外の獣医の大学病院に来た犬200頭のうち胆泥保有率は66.5%で、肝胆道系疾患

  それ以外の疾患との間の胆泥保有率に統計学的に差は認められませんでした。

・胆泥症で肝酵素値が上がる?

  

  上がりません。

  

  肝酵素値とは血液検査で測定する ALT (GPT) ・AST ( GOT )・ALP ・GGT のことです。

  肝酵素上昇のない犬48%で胆泥が認められたというデータがあります。

  

  この肝酵素値の上昇のない胆泥を有する健康な犬の1年間の追跡調査でも肝酵素値の

  上昇は認められませんでした。

  

  日本の獣医の大学病院で飼育されている健康なビーグルで胆泥を有している個体の

  血液検査を実施しても肝酵素値の上昇は認められなかったという報告があります。

  

  → 胆泥を有していて肝酵素値が上昇している場合は胆泥以外の疾患の可能性を考慮

    すべきとされています。当院でもドックを実施した際に胆泥はよくみる所見ですが

    肝酵素値が上昇していることはありません。

・胆泥貯留した胆嚢の機能は本当に正常か?

  胆泥貯留量が多い症例は胆道系疾患が多いという比較的古いデータもいくつか存在

  しますが、これらは症例数が少なく統計学的に信憑性はかなり低いです。

・胆泥は胆嚢粘液嚢腫になるのか?

関連性は低いです。

あるアンケートを実施した結果を報告したデータでは、胆泥→胆嚢粘液嚢腫のように

誤解をしている獣医師が多いことを指摘しています。

  

胆泥を有する犬はとても多く、そのほとんどは胆嚢粘液嚢腫になりません。

  

45頭の胆泥を有する健康な犬に対して1年間の追跡調査を行った報告では、全体として

胆泥の量に変化は見られなかったとされています。

この45頭の中に胆嚢粘液嚢腫を発症した症例は1例もいませんでした。

日本の大学病院で胆泥を有する15頭の犬を2年〜4年6ヶ月追跡調査した報告でも、

胆嚢粘液嚢腫の状態になった個体はいなかったとされています。

→ 胆泥が胆嚢粘液嚢腫の引き金であることは証明されていないことになります。

・治療の考え方

獣医学先進国である米国の複数の外科専門医に質問をし、胆泥を理由に胆嚢摘出をする

と答えた者はいなかったという報告もあります。

  → 胆泥を理由に胆嚢摘出はしないというのがインターナショナルスタンダード

    胆泥を有する21頭の犬にウルソデオキシコール酸を開始し、数ヶ月から数年間追跡

    調査を行った報告では胆泥が消失したのはわずか1頭のみであった。

  

  → 21頭中1頭は4.7%に値し、これは明らかに効果があるとは言えません。

    そのほかの似たような研究でもウルソデオキシコール酸が有効というのを証明した

    証拠はありません。

  

  低脂肪食が有効ではないかという推測があるが、有効であるということを証明した

  データは存在しません。

まとめ

 ・胆泥を有する犬はとても多い

 ・胆泥を有する犬を長期間追跡調査してもそれによって問題が起こることは基本的にない

 ・ヒトと犬で胆泥の成分が異なる

 ・ウルソデオキシコール酸が有効だというデータはヒトでも犬でも存在しない

 ・胆泥は治療対象ではないというのがインターナショナルなスタンダード


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