短頭種気道症候群 ( Bracycephalic Airway Syndrome: BAS ) とは|江東区の木場パークサイド動物病院 NEW
短頭種気道症候群
短頭種気道症候群 ( Bracycephalic Airway Syndrome: BAS ) とは
鼻 ( マズル ) の短い犬種に見られる先天的な構造的異常 ( 解剖学的異常 ) のことを指します。最近では “ 短頭種閉塞性気道症候群 ( Brachycephalic Obstructive Airway Syndrome: BOAS) と呼ばれるようになってきました。いくつかの異常が組み合わさっていることがほとんどで、個体により異常の種類や重症度は様々です。
症状
いびき:寝ているときに人と同じような “ ブー “ というような音がします。
激しい呼吸音:興奮した時や暑くて口を開けて呼吸したときに喉 ( ノド ) のところから” ガーガー “ という音がします。
運動不耐性:運動するとすぐに疲れてしまったり、脱力してしまったりします。
呼吸困難:運動時などに速い呼吸 ( 呼吸促迫 ) になると苦しそうになり、舌が紫色になるチアノーゼを起こしたりします。
失神:チアノーゼの状態では酸欠 ( 低酸素血症 ) になり脳の酸素不足により失神して倒れたりすることがあります。
嘔吐・吐出:うまく呼吸ができないと胃や食道に負担がかかり、吐いてしまうことがあります。
なりやすい犬種
イングリッシュブルドッグ・ボクサー・ボストンテリア・パグ・フレンチブルドッグ・キャバリアキングチャールズスパニエル・チワワ・ペキニーズ など
なりやすい猫種
ペルシャ・ヒマラヤン など
異常の種類:一次的異常と二次的異常があります
◆一次的異常
外鼻口狭窄:鼻の穴 ( 外鼻口 ) が狭くなっています。
鼻咽頭鼻甲介異常:鼻の中の、吸った空気を加湿するための構造がギュッと詰まっていて鼻腔の空気の通り道が狭くなっています。
軟口蓋過長症:ノドチンコ ( 軟口蓋 ) のところが長く厚くなっています。
気管低形成:体の大きさに対して気管が細いです。
◆二次的異常
喉頭小嚢反転 声帯のところにある小さな袋状の構造物 ( 喉頭小嚢 ) が後ろにひっくり返っています。
扁桃反転 口の中の奥にある扁桃腺が出てきてしまっています。
喉頭虚脱 喉 ( ノド ) の入り口の軟骨が変形して空気の通り道が狭くなっています。
消化器異常 食道炎・食道裂肛ヘルニア・胃炎・幽門狭窄
非心原性肺水腫 気道が狭い状態で無理に呼吸をすると肺に水が溜まってくることがあります
診断
病歴聴取
∟これまでに見られた症状をお聞きします。
・喉のあたりからガーガーという音がする呼吸
・消化器症状:嘔吐 吐出 吐き気 嚥下障害 唾液分泌過多 ( 流涎亢進 )
・運動時に疲れやすい 興奮時にチアノーゼになる
運動負荷試験
∟外を3分くらい歩かせて運動不耐性や開口呼吸した時のガーガーという音がするかを確認します。
レントゲン検査
∟頭部と胸部のレントゲン写真を撮って軟口蓋の長さと気管が細くないかを確認します。
喉頭鏡検査
∟鎮静薬 ( 眠くなる薬 ) を投与して喉のところを観察します。
・軟口蓋過長があるか
・扁桃反転があるか
・被裂軟骨の変形があるか
・喉頭小嚢反転があるか
・その他の異常があるか
→ この検査は手術の時に一緒に行うことが多いです。そうすることで鎮静や麻酔が一回で済みます。
以上の検査の所見を確認して総合的に異常の検出と治療プランを立てます。
治療
◆一次的異常
外鼻口狭窄
鼻咽頭鼻甲介異常
軟口蓋過長症
気管低形成
◆二次的異常
喉頭小嚢反転
扁桃反転
喉頭虚脱
消化器異常
食道炎・食道裂肛ヘルニア・胃炎・幽門狭窄非心原性肺水腫
→ 紫色の異常は手術対応が可能です。鼻咽頭鼻甲介異常は口蓋を開ける必要がありあまり実施されません。多くの場合、外鼻口狭窄と軟口蓋過長症の手術で改善します。過去の報告ではこの2つの手術で90%以上の飼い主の方が “ 満足 “ あるいは” 非常に満足 “ と答えたというデータがあります。
避妊手術や去勢手術の時に一緒に実施されることもありますが1つ注意が必要です。成長中に実施手術を実施した場合、大人になる過程で外鼻口がまた狭くなってきたり、軟口蓋がまた伸びてきたりすることがあります。外科の専門の先生の中には成犬になる前の手術を推奨しない方もいらっしゃいます。
短頭種気道症候群はいくつかの異常が複合的に存在します。治療ができない ( 治療法が確立されていない ) 異常もあります。手術はあくまで症状の緩和によって生活の質が向上すること ( 運動時や暑い時や寝る時に呼吸がラクになること ) が目的であり目標であることを知っておくことが重要です。
手術をした子たちの飼い主の方たちは、呼吸が楽になったり、夏が過ごしやすそうになったりと治療に満足されている方が多いです。
当院では短頭種気道症候群の診断や治療に関する相談を行っています。手術するべきかなどで迷ったり、お困りのことがあればご相談ください。