コラム column
猫の慢性腎臓病(前半)
こんにちは。
木場駅・東陽町駅が最寄りの「木場パークサイド動物病院」です。
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病(CKD)は片方または両方の腎臓に構造的異常や機能的異常が3ヶ月以上持続して認められる状態と定義されています。
通常、認められた異常や失われた機能は治療を行なったとしても元に戻らず、時間経過と共に進行・悪化していきます。
猫では5歳以上で40%、15歳以上では80%以上でCKDを患っているという報告もあり、多くの猫で死因となっています。
原因
猫のCKDは主に尿細管間質性腎炎がきっかけとなり、尿細管萎縮や繊維化、ネフロン減少などが生じる事で進行していきます。
尿細管間質性腎炎を引き起こす原因は特定できておらず、ウイル感染や歯牙疾患など様々な要因が関与しているのではないかと考えられています(表1参照)。
症状
症状は様々ですが多飲多尿が最も多く認められる症状であり、それ以外にも食欲不振や活動性低下などが認められます。
疾患が進行すると体重減少や口臭が強くなったり、痙攣発作などの神経症状を認める事もあります。
診断・ステージング
国際腎臓病学会(International Renal Interest Society: IRIS)がガイドラインを策定しています。
これに従い診断と病気(ステージ)を決め、治療を進めて行きます。
診断は血液検査や尿検査、腹部超音波検査にて腎臓の器質的(構造的)異常または機能的異常が持続している事を確認する事で行われます。
機能的異常は糸球体濾過量(GFR)の減少を、器質的異常は腎臓構造の変化(皮髄不明瞭、腎嚢胞など)を評価していきます。
以下に各検査における評価項目をまとめます。
・血液検査:クレアチニン、SDMA → 機能的評価
・尿検査:尿比重、尿蛋白→ 機能的評価
・腹部超音波検査:腎臓構造異常(皮髄不明瞭、腎嚢胞など)
血液検査及び尿検査の異常項目が約3ヶ月程度持続する場合、または腎臓の構造異常が認められる場合はCKDと診断されます。
CKDは、診断後にその病期(ステージ)を決めていきます。これをステージングと言い、非常に重要な過程となります。
なぜならそのステージ毎で治療介入内容や予後(平均寿命)が変わってくるからです。
ステージングは以下の表を元に分類していきます。
ステージング後、さらにそれぞれのステージにおいてサブステージの有無を判断していきます。
サブステージには尿蛋白(UPC比)と血圧(収縮期)が含まれ、これらは予後に関わってくるため、必ず検査していく必要があります。
治療
CKDに対する根本的な治療方法は残念ながら現段階では存在しないため、治療目標は病態進行を緩和していく事になります。
具体的な治療方法を下記に記載します。
・脱水補正(点滴)
・腎臓療法食
・リン吸着剤
・カリウム補充
・貧血への対応(エリスロポエチン製剤)
・降圧剤
・アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)、アルドステロン受容体拮抗薬(ARB)
上記治療をそれぞれのステージ及び病状に応じて選択していきます。
治療の詳細に関しては猫の慢性腎臓病(後半)で解説していきます。
終わりに
今回は猫のCKDにおける病態と診断・ステージングを中心に解説しました。
CKDは最も多く遭遇する疾患の一つですが、そのステージやサブステージ、病状によって行うべき治療は大きく変わってきます。
そのため、的確に診断・ステージングする事は適切な治療へと繋がり平均寿命を伸ばす事になります。
当院では治療はもちろん、診断にも力を入れていますので、『慢性腎臓病かな?』と思われた際にはお気軽にご相談ください。
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