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猫の慢性腎臓病(後半)

こんにちは。

木場駅・東陽町駅が最寄りの「木場パークサイド動物病院」です。

 

猫の慢性腎臓病(前半) 

 

はじめに

 

前半では慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)の診断及びステージングを中心に解説しました。
今回の後半では治療を中心に解説していきます。

 

治療

CKDに対する根本的な治療方法は残念ながら現段階では存在しません。
そのため、治療目標は病態進行の緩和となります。

 

このために行う一般的な治療内容は下記の通りになります。
腎臓療法食
リン吸着剤
脱水補正(点滴)
カリウム補充
高血圧への対応(降圧剤)
タンパク尿への対応
(アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)、アルドステロン受容体拮抗薬(ARB))

貧血への対応(赤血球造血刺激因子製剤)

 

この様にたくさんの治療方法がありますが、全ての治療を行えば良いわけではありません。
大事なのはそれぞれの症例に合わせ本当に必要な治療を選択していく事です。
特に猫では投薬自体が大変な事が多いため、不必要な治療は避けるべきです。
下記にそれぞれの治療方法のポイントを解説していきます。

 

腎臓療法食

 

腎臓療法食の最大の特徴はリンを著しく制限している事になります。そのため、療法食の中で唯一総合栄養食ではありません。
慢性腎臓病(CKD)では血液中のリンを尿中に排泄しづらくなる事で、血液中のリンが上昇していきます。
CKDのうち、血液中のリンが高い症例と低い症例を比較した場合、リンが低い症例の方が寿命が延長したと報告されています。
そのため、食事中のリンを制限する事は非常に重要な治療の一つとなってきます。

 

この様に食事中のリンを制限する事は非常に重要ではありますが、『CKD=腎臓病療法食を与える』というのは正しい見解ではありません。
CKDに対して腎臓病療法食を開始するタイミングは決まっており、ステージ1では腎臓病療法食は推奨されず、ステージ2以降からが推奨されています。

 

また、ステージ2とステージ3、4でもリン制限の程度には違いがあり、ステージ3、4ではさらにリンを制限する必要があります。
下記に各ステージ毎に推奨されている食事をまとめます。

 

 

リン吸着剤

 

リン吸着剤は腎臓療法食を使用してもリンが十分に下がらない場合に併用されます。
ここで注意が必要なのは一般食(市販食)と併用しても効果が期待できないという事です。
リン吸着剤は食事中のリンと結合する事により、消化管からの吸収を防いでいますが、一般職ではリンの含有量が多く、吸着しきる事ができません。
そのため、リンが制限されている腎臓病療法食と合わせる事により効果を最大限発揮します。

 

また、血液中のリンの目標値はステージ毎によって異なり、その目標値を目指すためにリン吸着剤は使用されます。
そのため、リン値が血液検査では正常値であったとしても目標値よりも高い場合には治療対象になります。

 

 

脱水補正(点滴)

 

慢性腎臓病(CKD)では多尿が引き起こされ、脱水状態に陥ることがあります。
脱水は食欲・活動性の低下や便秘、尿毒症の悪化など様々な症状を引き起こします。
そのため、脱水させない事が重要なポイントとなります。多くの動物病院では脱水に対して皮下点滴を実施しており、これは非常に有用な方法となります。
しかし、皮下点滴をやり過ぎてしまうと、本来の腎機能を害してしまう可能性があります。
腎臓は内部に浸透圧物質という水分を引き込む物質を持っており、それを利用して尿量などを調節しています。
しかし、脱水していない動物に過剰な点滴を実施してしまうとその浸透物質が洗い流されてしまい水分を体に蓄えておく事ができなくなります。
そのため、尿量がどんどんと増えていき最終的には脱水状態に陥り、それを補うためにさらにたくさんの点滴が必要となり、悪循環に陥ってしまいます。
良かれと思った点滴がペットにもご家族様にも不利益となり得るので注意が必要です。

 

そのため、点滴を行う際には脱水状態を的確に評価し、必要に応じた点滴をする事が重要となります。
多くのCKDステージ1、2の症例では、自力飲水で十分な水分量を確保できる事が多く、脱水が認められる場合でも軽度であれば食事中の水分含有量を増やす(缶詰、ふやかしたドライフードを給餌)工夫をする事によって対応可能な事がほとんどです。

 

 

カリウム補充

 

猫の慢性腎臓病(CKD)のうち3〜4頭に1頭の割合で低カリウム血症が認められます。
低カリウム血症になってしまうと筋虚弱や食欲不振、活動性低下、便秘などが引き起こされます。
また、人では低カリウム血症自体が腎機能を悪化させると言われているため、猫でも適切に治療していく事が望ましいです。
治療はカリウム製剤の投与となり、点滴と飲み薬の2通りがあります。
基本的には安全性の高い飲み薬を使用し、点滴は低カリウム血症が重度な場合に行います。

 

降圧剤

 

慢性腎臓病(CKD)が進行してくると約5頭に1頭の割合で高血圧が認められます。
高血圧は様々な臓器に影響を与え、例えば失明、痙攣発作、腎臓病の悪化、心臓病の悪化などが引き起こされます。
そのため、CKDでは定期的に血圧を測定し、必要に応じて治療介入していく事が望まれます。
特に収縮期血圧(最も高い血圧)160mmHg以上が持続する場合は治療を開始していく事が推奨されます。
治療はアムロジピンやテルミサルタンなどの降圧剤が使用されます。

 

 

蛋白尿への対応

 

猫では尿蛋白が問題となる事は多くありませんが、UPCという尿中のタンパク質濃度を表している項目があり、UPCが高い慢性腎臓病猫は低い個体と比べ寿命が短い事が報告されています。
そのため、数値をコントロールしていく事は重要となり、腎臓病療法食と合わせてアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)、アルドステロン受容体拮抗薬(ARB)が使用されます。

 

貧血への対応

 

腎臓はエリスロポエチンという増血ホルモンを分泌しています。
しかし、慢性腎臓病(CKD)が進行していくとそのホルモンが作られなくなり貧血に陥ってしまいます。特にPCV(Hct)が20%を下回る場合は治療を積極的に行っていく事が推奨されます。
治療は失われているホルモンを補充していく事になり、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が使用されます。
猫に用いられるESAにはいくつか種類があり、最近では猫専用のエリスロポエチン製剤が使用可能となりましたが、使用実績(エビデンス)が十分ではない事から現段階では効果・安全性で最も優れているダルベポエチン製剤が第一選択となっています。

 

 

終わりに

 

慢性腎臓病は動物病院では比較的よく遭遇する疾患の一つです。
ある調査によると猫の2大死因に挙げられています(もう一つは腫瘍です)。
しかし、その病状は様々で、同じ治療で対応できるものではありません
また、治療は長期に渡り時間経過と共に病状は変化していきます。
そのため、その変化に伴い治療内容が増えていく可能性があります。
定期的に再診を行い、適切に病状を把握(正しい診断とステージング)し本当に必要な治療を選択していく事が重要となります。
当院では飼い主様とよく相談し、愛猫に対する最適な検査及び治療をご提案できる様に努めています。
不安な事や不明点がありましたら遠慮なくご相談ください。