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メレナ(黒色便)・血便(鮮血便)について
こんにちは。
木場駅・東陽町駅が最寄りの「木場パークサイド動物病院」です。

メレナ(黒色便)・血便(鮮血便)とは
普段と比較し便が黒色〜鮮血色に変化している状態で、消化管内に血液が混入することで認められます。
メレナも血便も血が混じる事に変わりはありませんが、その成り立ちや原因、問題が生じている部位が異なります。
メレナの原因
メレナは赤血球を構成しているヘモグロビンが腸内細菌によってヘマチン(黒色)などの血色素 に変換される事によって黒色になります。
変換される為にはある程度の時間が必要な為、通過時 間を有する上部消化管(食道〜空腸)からの出血がメレナの原因として最も疑われます。
ただし、必ずしも消化管からの出血が原因とは限りません。その他の原因として、鼻出血、口腔 内出血、喀血(気管・気管支・肺からの出血)による血液の経口摂取も考えなければなりません。
さらに薬剤(ビスマス:下痢止め)や食事(生肉・肝臓)の影響で便が黒くなる事もあり、原因は多岐 にわたります(表1参照)。
表1 メレナの主な原因
血便の原因
血便はヘモグロビンが変換されずに便に混じる事で赤色になります。変換される前なので、出血 してから時間はあまり経過していないという事になります。
その為、血便を認めた場合は下部消化管(回腸〜直腸)や肛門からの出血が疑われます。
原因はメレナとほとんど同じですが、血液の 経口摂取や薬剤・食事による血便はほとんど認められません。
メレナ・血便を認めた際の対応
メレナを認めた場合、基本的には病院を受診する事をお勧めします。なぜなら、メレナでは腫瘍 や異物などの命に関わる疾患が原因となっている事が多いからです。
血便を認めた場合、重症度に応じて受診するかどうかを検討します。例えばイチゴジャムの様な血液主体の血便であれば、パルボウイルス感染症などの重篤な疾患の可能性があるので、病院を受診する事をお勧めします。
しかし、正常な便に少量の血液が付着している程度であれば自然に治る疾患(結腸炎など)が疑われる為、食欲や活動性が落ちることなくいつも通り過ごせているようであれば経過観察も可能です。
ただし、軽い症状でも繰り返す場合は動物病院への受診を推奨します。
いずれにしても、判断に悩む場合は動物病院へ連絡をとり、指示を仰いでください。
診断アプローチ
メレナ・血便に対する一般的なアプローチは下記の様になります。
1 問診:食事内容、投薬歴、呼吸器症状、嚥下障害、出血傾向(血尿、鼻出血)を確認
2 身体検査:口腔内観察(腫瘤など)、肺音異常、出血傾向(紫斑)の確認
腹部触診、直腸検査(特に血便で実施)
3 便検査: 寄生虫などの感染性疾患の確認
4 血圧測定:高血圧による出血傾向の除外(必ずしも実施しない:ex, 若齢など)
5 血液検査:血小板数や凝固系を中心に実施
6 画像検査:頸部〜胸部X線検査、腹部超音波検査(①、②の内容に応じて検査を選択)
これらの結果に基づいた診断を行い、治療を開始していきます。
診断に至らなかった場合は内視鏡検査による消化管生検やCT検査が必要になる事もあります。
治療
治療は原因疾患に対する治療と対症療法があります。
▶︎ 原因疾患に対する治療
Ex),腫瘍→外科手術・抗がん剤、鞭虫感染→駆虫薬の投与
▶︎ 対症療法
1 点滴:通院であれば皮下点滴、入院では静脈点滴
2 制酸剤:プロトンポンプインヒビター(オメプラゾールなど)、メレナに対して実施
3 高線維食:療法食またはサイリウム、血便に対して実施
4 試験的駆虫薬・抗菌薬:一般状態や臨床症状の重症度に応じて実施を検討
血便は症状が軽度であれば、対症療法による通院治療が提案され、その多くは対症療法で状態の改善が見込まれます。
ただし、重症と判断される場合は入院管理下での集中治療や精査が推奨されます。
メレナは原因疾患を患っている事が多い為、対症療法と並行して積極的な精査が推奨されます。
1, Textbook of Veterinary Internal Medicine 9th Edition
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