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下痢について

こんにちは。

木場駅・東陽町駅が最寄りの「木場パークサイド動物病院」です。

 

下痢について 

 

下痢

 

消化管の水分吸収能の低下や分泌液の過剰により便の水分含有量が増加した状態を下痢と言います *1。

つまり、イメージしやすい泥状や水溶性(液体状)だけでなく、便が少し柔らかい状態の軟便も下痢として区分されます。

 

下痢を認めた際の対応

 

下痢を認めたとしても必ずしも検査や治療が必要なわけではありません。症状が軽く、活動性や食欲が良好な場合は無治療でも自然に治り、整腸剤や抗菌薬を使用した場合と比較しても改善 までの日数に差はないとされています(平均4-5日)*2。

 

ただし、次の場合は動物病院への受診が推奨されます。

 

  1. 下痢症状が酷い
  2.  

  3. 下痢に加えて活動性や食欲も低下している(または嘔吐を伴う)
  4.  

  5. 下痢が2週間以上持続または断続的に続いている(慢性経過) 

上記1-3に合致する場合は動物病院を受診し、適切な検査や治療を行う事が必要です。症状に迷う場合は動物病院に連絡をとり、判断を仰いでください。

 

診断アプローチ

 

下痢の原因は多岐に渡りますが、大きな枠組みとして消化管疾患消化管外疾患に分けられます *1。

・消化管疾患:胃腸自体の問題
Ex)食事関連、寄生虫、慢性腸症、腫瘍、異物、腸重積など

 

・消化管外疾患:胃腸以外の問題
Ex)膵炎、肝/腎疾患、アジソン病、甲状腺機能亢進症、膵外分泌不全症など

 

上記を念頭に各種検査を行っていきます。

 
 

  1. 問診:食事内容の変化や異物誤食などを確認
    これらの詳細な情報が診断のカギになることもあります。
    これらは血液検査などをしても異常は見られず、問診でのみ得られる情報です。
  2.  

  3. 身体検査:
    部触診や直腸検査にて異常所見の確認(圧痛や腫瘤性病変の有無)リンパ節の腫大や発熱も身体検査でのみ得られる情報です。検査プランを立てる際に重要なカギとなる情報が得られることもあります。
  4.  

  5. 便検査:寄生虫や原虫(ジアルジア、トリコモナスなど)などの感染性疾患の確認
    特に仔犬や仔猫の下痢の原因で最も多いものは寄生虫感染です。
    正しい方法で検査をしないと検出できないことも多いです。
  6.  

  7. 腹部超音波検査:異物や腸重積、腫瘍性疾患の確認
    消化管及びその他の組織の構造的変化を検出します。腫れやシコリの有無も検出できます。
    これにより得られた所見と血液検査所見を 総合的に判断して診断をしていきます。
  8.  

  9. 血液検査:化管外疾患の確認
    消化器の異常は血液検査では殆ど情報が出てきません。全身を巡っている血液は様々な組織が出す情報をとらえることができます。口・食道・胃・腸以外の組織の異常を検出するために実施します。
  10.  

  11. 内視鏡検査:上記の検査を行っても診断に至らない場合に検討する検査です。
    内視鏡は肉眼的に胃や腸を観察する意外にも組織を採取(生検)したりすることも出来、この検査でしか診断が出来ないものも たくさんあります。

これらの結果に基づいた診断を行い、治療を開始していきます。
正しい方法・正しい順番で上記検査を実施していけば殆どの疾患は診断が可能です。

 

治療

治療は診断された疾患に応じて実施されます。
検査にて大きな異常を認めず、または比較的軽症と判断される場合は急性胃腸炎として皮下点滴対症療法による通院治療が実施されます。状態が悪い場合は、入院管理下にて集中治療を行う事もあります。
また、治療を行なっても改善に乏しい場合は再検査を行い、病態の再評価に努める必要があります。疾患ごとに治療法が異なります。

 

*1, Textbook of Veterinary Internal Medicine 8th Edition
*2, A randomized double blinded placebo-controlled clinical trial of a probiotic or metronidazole for acute canine diarrhea. Shmalberg J. et al.,Front Vet Sci 2019